ひとり飲みが好きだ。
というか、仕事が終わって軽く一杯いこうかとなると、
流れ的に、基本、ひとり飲みとなる。
もちろん何人かで飲むのが嫌いというわけではない。
大勢でワイワイと食べたり飲んだりするのは楽しいし、むしろ大好きだ。
でも、ひとりで飲むのだってけっこう楽しい。
誰にも気兼ねすることなく、
自分のタイミングでふらりとお店に入る感じがたまらなく好きなのだ。
そんなひとり飲みに欠かせないものが、本である。
本さえあれば、ひとりであることをもて余さず、魅惑のハッピーアワーを満喫できる。
スマホをいじりながら過ごすよりも、まあ、やってることは一緒だけど、
本のほうがまだ、場になじむというか、
お客の振る舞いとして好ましいような気がする。
料理をつまみながら物語を追い、グラスをあおってはページをめくる。
お皿が空になっても、注文ひとつで再び素敵な一皿が運ばれてくる。
なんて贅沢なひとときだろう。まさに、おひとりさま天国である。
そんなひとり飲みの時には、気楽に読める難しくない本がいい。
例えば、ちょっとファンタジーが入ったストーリーものとかだと、
アルコールと相まって気分よく本の世界に没入できる。
以前こんなことがあった。
近くの立ち飲みのビストロで、ある小説を読んでいた。
そのなかに中世ぐらいのヨーロッパの盛り場を思わせるシーンがあって、
薄明かりのサーカス小屋で主人公がカードマジックに興じる様子が描かれていた。
その時、文章を追いながら自分の頭に浮かんだ光景が、
ほのかな電灯に照られ、ボトルが並び、ワイン樽や木箱がレイアウトされた、
まさに今、自分が飲んでいるビストロの雰囲気とそっくりだったのだ。
不思議な体験だった。
一瞬、時空がねじれたような、奇妙な感覚におちいった。
物語の臨場感が3倍増しぐらいになって押し寄せ、興奮気味にページを読み進めた。
あれはおもしろかったな。ただ単に酔っ払っただけなのかもしれないけど。
こんなふうに飲み屋で本を読んでいると、お店の雰囲気に本の世界観が増幅され、
自分が物語に取り込まれたような気になることが、たまにあるのだ。
とはいえ、なじみの店に行くと、ページはちっとも進まなくなる。
スタッフが話しかけてくれるし、自分からも声をかけて、笑い話に花を咲かせる。
やっぱり、飲み屋で人と人との会話が弾むのなら、それがいちばんだ。
本は閉じて、現実の話で盛り上がるほうが、夜は楽しくふけていく。
[代表雑記 003] ひとり飲みのパートナー
2017年9月29日