ストーリーの組み立て方が上手だなあ。それがまず、この映画を観て思ったことだ。
幼い頃に迷子になり、別の国で養子として育てられ、大人になって故郷を捜す。
いってしまえば、全体の流れはそういうことでしかない。
しかし、大きな流れを構成するひとつひとつの話がとても自然で、つながりに無理がない。
そして自然だからといって観ていて退屈な話というわけではなく、
それぞれに驚きがあり、美しさがあり、共感があり、何より必然が感じられる。
こういうのって、できそうでなかなかできない高度な技だと思う。
物語の構成の面白さではなく、物語が流れていくシーンのつながりの面白さでもたせていくというか。
どういえばいいのだろう。非日常を非日常として描くのではなく、
日常のなかに非日常を忍ばせて、それを日常として描き、最後はちゃんと面白かったと思わせる。
そんな絶妙なさじ加減の表現が映画全体に施されているように感じた。
これつくった人って、きっとすごく賢いんだろうな。
あと、身につまされて思ったのは、「状況に対してどう動くべきか」ということ。
幼い子どもが一人で迷子になれば、危険な場面にも遭遇する。
ここは逃げるべきか、とどまるべきか、その時の判断が大げさではなく、人生を左右してしまう。
しかも判断するだけではなく、瞬時に行動できなければ、意味はない。
行動こそがすべて。そういう状況の連続。
これって、映画の世界だけの話ではない。いま自分がいる世界だってそうだ。
そして僕は、そういう瞬時の判断や行動が、とても苦手だ。
どうも状況が怪しい。このままではマズイことになりそうだ。
そういう空気を察知することは、けっこう長けているほうだと思う。でも、行動ができない。
「まあ、自分は大丈夫だろう」「そんなに悪いことが起こるわけない」
「少しでもよくなるほうに行こうとするなんて、かっこ悪い」
そんな言い訳が次々に頭に浮かぶ。結局その場にとどまったまま、ずっと居続けることになる。
そしてしばらくすると、「自分は今の状況を受け入れているのだ」などと思い始める。
どう見ても、状況に流されているだけなのに。
行動すべき時に、ちゃんと行動する。
そういう当たり前のことをやらなきゃと、あらためて考えさせられました。
あと、そもそも迷子にならないこと。
人生において、それもすごく大事なことだと思います。
[映画感想文 003] 『LION/ライオン 25年目のただいま』
2017年12月15日